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カテゴリー「小 説」の記事一覧
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- 2012.07.08 猫の帰る場所・1
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「こんな所に居たのか~!」
上からあっけらかんとした声が降ってきた。
春になれば、美しい薄紅に染まる、学園が見渡せる丘。今は乾いた風だけが吹く、何もない見晴らしの良い丘の上。
文次郎はそこで空を見上げるように寝転がっていた。
「…何の用だよ。体育委員長」
五月蝿いのが来たとばかりに、文次郎は顔をしかめる。
「はっはっはっ!私をそう呼ぶと言うことは、また迷っているのか?」
「…バカたれ。んなわけあるか」
静かだった場所が、たった1人増えただけで騒がしくなったものだ。文次郎は舌打ちながら身体を起こす。
「嘘だな。」
「…」
「仙蔵とお前はいつもそうだ。」
その隣に断りもなく腰を下ろし、小平太は両脚を投げ出すように寝転がった。
「悩む時、決まって一人になりたがる」
「…うるせえ」
腹が立つのを感じつつ、文次郎は視線を背けてため息をついた。
腹が立つのは、図星を突かれたからだ。
木々を吹き抜ける風が、枯れ葉をカサカサと連れ去って行く音ですら耳障りに感じてしまう。
「…俺を笑いに来たのかよ」
「はっはっはっ!そうだな!探したぞ~」
「ちっ…」
コイツはいつもそうだ。
心の中で文次郎は呟いた。
「細かいことばかり気にしているとハゲるぞ?」
「ハゲてたまるか」
「ハゲっ!!」
「どこがだっ!!」
「はっはっはっはっ!」
鍛錬を共にするようになってから、いつからかコイツはこうしてやってきて
「どこで悩んでも、結局答えは同じだぞ?」
言われないでも分かっていることを、ワザワザ言いに来るのだ。
「…お前には関係ないだろうが。」
「ないな。お前の頭の中はわからん。」
「お前が答えを持ってる訳じゃあるまいし」
「当然だ。答えは自分で出さないとな!」
「…」
「本当はもう、答えは決まってるんだろう?」
小平太はカラカラと笑う。
言葉は空に向かって投げられていた。
決して正面から文次郎には向けられていない。
それでも真っ直ぐ。迷いなく向かってきて、痼りのように残るのだ。
「…お前は迷わねぇのかよ…」
思わず零れた言葉に、文次郎自身が驚いた。咄嗟に口を塞ぐが、出てしまった言葉はもう戻らない。
小平太も驚いたように目を向け、まじまじと文次郎を見る。
しばらく押し黙った後、意外にも応えが返ってきた。
「…私は、出してしまったからな。ずっと前に。」
小平太は勢い良く身を起こすと、学園のある方を眺めながら続ける。
「私は、その答えを曲げたくない。それが答えだと思っている。」
そうして再び、文次郎を覗き込む。
「私は、忍びになるよ。」
背けた視界の端に見える小平太の顔は、今まで見たことがない程大人びて見えた。
『お前たち、進路(さき)は決まったか?』
答えは、是、以外にないと思っていたのに。
思い描いた進路(さき)に、一瞬、躊躇ってしまった。
自分の故郷。
家族。
それらを想えば、答えは一つしかないのに。
どうしようもない後ろめたさと、戸惑いを感じて。
あと一年しか、ないのに。
「…だが、競争でもなかろう?」
「…は?」
競争‥?
文次郎の脳裏を巡っていた罪悪感のような悶々としていた思考が、浮かんだ疑問と共に途切れて止まる。
顔を上げると、変わらず覗き込んでくる小平太とパチリと目が合った。
「だから。答えを出すのに、急ぐ必要はないだろう?私の悩みは私のもので、誰かと競う必要はない!文次郎の悩みだってそうだ。違うか?」
「!」
いつもの笑顔で、小平太はにかっと笑う。
「競争だったら、私の勝ちだけどな!」
迷って、いいのか
ちいさく。
文次郎の中で、
何かが込み上げた。
喉元まで来たそれを、小平太に悟られぬよう、静かに飲み込む。
「負けてねぇ」
文次郎もまた、笑って見せた。
「なら学園まで、どちらが先に着くか競争だ!」
「臨むところだ!」
もうじき、また春が訪れる。
今はまだ、澄んだ青空に黒い枝が寂しく伸びているだけだが。
まもなく此処に、一面の桜が舞うのだろう。
「いけいけどんどーん!!」
一足先に駆け出した小平太の変わらない声が、木々の間に響いて消える。
次ここに来るときは、このバカと。
あいつらとまたバカ騒ぎをするのだ。
確かにあと一年かもしれない。
けれど
まだ、一年ある。
文次郎は頭の片隅で思った。
了
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目が覚めたとき。喜八郎の目の前には80歳はとうに越えた爺さんが座っていた。
熱がまだ下がり切らず、霞む瞳で誰であるかを確認するが、こんな皺くちゃな爺さんに記憶はなかった。
「‥誰?」
爺さんの右の眉がピクリと上がり、皺に紛れて見えなかった小さな瞳が喜八郎を捕らえた。一瞬、老人とは思えない鋭い眼光に胸が射られドキリと跳ねる。しかしすぐにその目は柔らかな光を宿し、再び皺に隠れた。
「綾部、喜八郎」
顔と同じ、嗄れた声。
なんで名前を知ってるんだろう、と喜八郎は首を傾げつつゆっくりと瞬きをする。未だこの爺さんを理解し得ないでいると、追い討ちのように続く言葉に耳を疑った。
「…忍術学園に入学しなさい」
声が出ず、瞬きを2回する。
誰とも判らぬ爺さんに、恐らく看病されている今の状況すら解らない。
しかし、その言葉と声の中に温かさとほんの僅かな哀れみを感じて
ああ。また捨てられたのだな、と頭の片隅で理解した。
*****
貴方には想像できるでしょうか。3年前の彼らを。
ぱんだまの中で、3年前ほど重要でいとおしく、輝かしい年はありません。
3年前
6年は3年生
5年は2年生
そして4年は1年生…
これから始まる【猫の帰る場所】は、皆さんが想像したこともないだろう【土井+きり+綾部】
ぱんだまでは土井ファミリーと呼びます。
22歳の土井半助が、教員補佐として初めて与えられた課題。
それは【綾部(猫)と暮らすこと】
さぁ、数奇な世界の幕開けです。
貴方は この世界を愛せますか?
熱がまだ下がり切らず、霞む瞳で誰であるかを確認するが、こんな皺くちゃな爺さんに記憶はなかった。
「‥誰?」
爺さんの右の眉がピクリと上がり、皺に紛れて見えなかった小さな瞳が喜八郎を捕らえた。一瞬、老人とは思えない鋭い眼光に胸が射られドキリと跳ねる。しかしすぐにその目は柔らかな光を宿し、再び皺に隠れた。
「綾部、喜八郎」
顔と同じ、嗄れた声。
なんで名前を知ってるんだろう、と喜八郎は首を傾げつつゆっくりと瞬きをする。未だこの爺さんを理解し得ないでいると、追い討ちのように続く言葉に耳を疑った。
「…忍術学園に入学しなさい」
声が出ず、瞬きを2回する。
誰とも判らぬ爺さんに、恐らく看病されている今の状況すら解らない。
しかし、その言葉と声の中に温かさとほんの僅かな哀れみを感じて
ああ。また捨てられたのだな、と頭の片隅で理解した。
*****
貴方には想像できるでしょうか。3年前の彼らを。
ぱんだまの中で、3年前ほど重要でいとおしく、輝かしい年はありません。
3年前
6年は3年生
5年は2年生
そして4年は1年生…
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貴方は この世界を愛せますか?