落乱愛な二次創作blogサイト。 必ず「挨拶」からお読みくださいませ…
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ぱんだまハイツ302.5号
*****20XX年・春
「あっ!3階じゃん!夏花火とか見えんじゃない?!」
栗毛色のちょんまげを揺らしながら、小平太が鍵も持たずに階段を駆け上がる。
「走んなっ!…屋根なしかよ‥雨ん時やんなるな‥」
「あ、本当だ気がつかなかったぁ‥でもまぁ、狭い階段じゃないし、ホラ!通路はちゃんと屋根あるよ!」
「いや無かったら問題だろ‥。」
その後ろを文次郎がゆっくりと周りを見回しながら続き、そのまた後ろを伊作、留三郎が続いた。
少し遅れて紙袋を抱えた長次が、前のやり取りをこっそり笑いながら階段を上り始める。
此処は駅から徒歩7分。桜の美しい坂道を上り、野良猫たちに歓迎された小道を抜け、住宅と住宅に挟まれた、とあるマンション。
「長~次~っ!か~ぎ~っ!!」
「声でっけぇんだよっ!俺たちだけじゃねぇんだぞっ?!」
自動ロックの共有玄関を抜けて2階、2階から屋根の無い階段を上って3階へ。
長次が着くと、小平太は待ちきれない様子でドアノブをガチャガチャ言わせ(もちろん文次郎に殴られて止められた)、留三郎が右手を上げてパスを促した。
長次は抱えた紙袋からモノが落ちないよう、慎重に上着の右ポケットから緑のチェーンが付いた鍵を取り出すと、手首のスナップだけを利用して、器用に鍵を宙に放る。
綺麗に放物線を描いた鍵は、しっかりと留三郎の手のひらに小気味良い音を立てて収まった。
「さんきゅ!ほら退け小平太…」
そしてすぐに小平太の肩越しに腕を伸ばし、鍵穴に差し込む。
――――カチャン…
「~っ!!」
一同声にならない歓声を上げ、互いに目を見合わせた。そして小平太が扉を勢いよく手前に開ける。
「「「「「ただいまっ!!」」」」」
示し合わせた訳でもなく出た言葉。
20XX年・春。
扉の向こうのこの部屋が、5人の新しい家になった。
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